オレはリアリストだ。名前からして「マコト」だ。余計な夢など見ない。夢見たところでどうせ叶わない。現実的なことを突き詰めていくタイプだ。可能なことを出来るだけ突き詰めて追い込む。それがオレのスタイルだ。○○出来たらいいなあ…とか思っているヤツはだいたい甘い。○○になったらいいなあ、とか考えている奴もどうかしている。決めたらやる。出来ないことはやらない。そうやって生きてきた。一生懸命やったら…とかどうでもいい。結果がすべてだ。
同期のナオトは人望がある。だけどロマンチストで、甘っちょろい。○○さんは頑張っているから、とか、大丈夫、いつか報われるから、なんてつまらない事ばかり口にしている。そんなことはどうだっていい。使えるか使えないか、出来るか出来ないか。それがすべてだ。勝算があったらやればいいし、勝算が無ければやらなきゃいい。ウチの上司も言う事は壮大だ。結果を出すためにはこうするべきだ、ああするべきだ…とか言ってるけど、出来るわけねえだろ、そんなもん。出来る仕事をさっさと終わらせ、結果が出なさそうな事は、次につながるようにほどほどにしておく。次につながらない事は…まあ、付き合い程度は顔を出すが…。今夜はナオトに飲みに誘われた。まあ、少ない同期だし、付き合ってやるか。
「マコト、オレ、結婚することになったよ。」
ナオトは切り出した。こいつは耳触りが良いことをばっかり言うから、昔からモテた。まあ、コイツが結婚するのは納得だ。しかし、えらく大変な道を行くもんだ。
「で、結婚を機に、独立するよ。」
なに?えらく現実離れしたこと言うじゃねえか。
「で、お前に、今オレが持ってるプロジェクトを引き継いでもらいたい。課長には話を付けてある。」
おいおい。なんでそんな話になるんだよ。
「お前はコツコツ結果を出していることは知っている。実直で仕事も早い。だけど大きな仕事は手を出さないだろ。ある程度軌道に乗ったものなら確実に結果を出せる。お前なら信頼できる。今度は種を蒔いたことを軌道に乗せてくれ。」
待て待て、会社を裏切るお前がなんでそこまで話を付けてるんだ。オレはそんなことに興味がない。余計なことに巻き込まないでくれ。
「マコト、そろそろ現実逃避はやめようぜ。出来る出来ないじゃない。やるんだ。オレも自分を追い込み、周りを巻き込んで、失敗ばかりして来た。苦労ばっかりしてきた。だけど、そうすることで、周りから信頼されて、結婚も出来るようになった。家も買う話になった。独立しても、出来る見通しが立った。お前はやればできるんだから、やろうぜ。」
現実逃避?オレが?やればできる?逆だろ。オレはリアリストで、出来ることしかやらない男だ。
「マコト、まだそんなこと言ってるのか。」
ナオトは呆れたように言う。
「考えておいてくれ。お前に足りないのはチャレンジだ。出来ることだけやればいい…なんて甘ったれたことはいい加減に卒業してくれ。」
ナオトは苦笑いともとれるような笑顔でオレの肩を叩き、帰っていった。
翌日、課長に声をかけられる。
「ナオトから聞いたか?」
はい、聞きました。でもオレは…
「ナオトはやっぱり現実的だな。先のことをよく考えている。あいつならプロジェクトも安泰だと思ったが…。まさかお前に引き継ぎたいというとはな。マコト、お前良い同期を持ったな。」
ナオトが現実的?課長はいろいろ言ったが、オレは話が入ってこなかった。出来ることを突き詰める。オレが現実逃避をしていて、夢を語るマコトが現実的なのか?どうなってるんだ。
納得いかない話だが、今更プロジェクトリーダーを断るのは現実的ではない。ナオトと引き継ぎをする。ナオトは理想論を語るタイプだと思ったが、引継ぎをしてみると、メンバーの得意、不得意を良くとらえていて、行き詰ったときにどうすればいいかという事も細かく教えてくれた。ナオトは安堵したように笑って言う。
「マコト、お前がチャレンジしないのはただのめんどくさがりだと思っていたが、やっぱりそうだったな。飲み込みが良いし、理由をちゃんと分析できる。安心したぜ。」
「ナオト、お前こそ良く観察しているな。ロマンチストだと思っていたが、大したもんだ」
ナオトは驚いたように答える。
「ロマンチスト?冗談言うなよ。世の中理不尽なのが当たり前なんだから。それをどうにかしないと現実生きていけないだろ。オレは弱っちいリアリストだよ。」
なるほどな。リアルとはオレが思っていたよりもずっとめんどくせえヤツだってことか。出ないものを出す。ナオトに言わせればそうやって現実は出来ているらしい。
※ もう少し長編を考えていた話ですが、展開に行き詰って話を簡単にしてしまいました。現実とは常に理不尽で、それをどう受け入れ、どう感情を飼いならしていくか…がテーマだったんですが、思ったよりマコト君がうまく動いてくれない(笑)。原題は「夢見るリアリスト…」だったんですが、短編どころか超ショートショートに。
同期のナオトは人望がある。だけどロマンチストで、甘っちょろい。○○さんは頑張っているから、とか、大丈夫、いつか報われるから、なんてつまらない事ばかり口にしている。そんなことはどうだっていい。使えるか使えないか、出来るか出来ないか。それがすべてだ。勝算があったらやればいいし、勝算が無ければやらなきゃいい。ウチの上司も言う事は壮大だ。結果を出すためにはこうするべきだ、ああするべきだ…とか言ってるけど、出来るわけねえだろ、そんなもん。出来る仕事をさっさと終わらせ、結果が出なさそうな事は、次につながるようにほどほどにしておく。次につながらない事は…まあ、付き合い程度は顔を出すが…。今夜はナオトに飲みに誘われた。まあ、少ない同期だし、付き合ってやるか。
「マコト、オレ、結婚することになったよ。」
ナオトは切り出した。こいつは耳触りが良いことをばっかり言うから、昔からモテた。まあ、コイツが結婚するのは納得だ。しかし、えらく大変な道を行くもんだ。
「で、結婚を機に、独立するよ。」
なに?えらく現実離れしたこと言うじゃねえか。
「で、お前に、今オレが持ってるプロジェクトを引き継いでもらいたい。課長には話を付けてある。」
おいおい。なんでそんな話になるんだよ。
「お前はコツコツ結果を出していることは知っている。実直で仕事も早い。だけど大きな仕事は手を出さないだろ。ある程度軌道に乗ったものなら確実に結果を出せる。お前なら信頼できる。今度は種を蒔いたことを軌道に乗せてくれ。」
待て待て、会社を裏切るお前がなんでそこまで話を付けてるんだ。オレはそんなことに興味がない。余計なことに巻き込まないでくれ。
「マコト、そろそろ現実逃避はやめようぜ。出来る出来ないじゃない。やるんだ。オレも自分を追い込み、周りを巻き込んで、失敗ばかりして来た。苦労ばっかりしてきた。だけど、そうすることで、周りから信頼されて、結婚も出来るようになった。家も買う話になった。独立しても、出来る見通しが立った。お前はやればできるんだから、やろうぜ。」
現実逃避?オレが?やればできる?逆だろ。オレはリアリストで、出来ることしかやらない男だ。
「マコト、まだそんなこと言ってるのか。」
ナオトは呆れたように言う。
「考えておいてくれ。お前に足りないのはチャレンジだ。出来ることだけやればいい…なんて甘ったれたことはいい加減に卒業してくれ。」
ナオトは苦笑いともとれるような笑顔でオレの肩を叩き、帰っていった。
翌日、課長に声をかけられる。
「ナオトから聞いたか?」
はい、聞きました。でもオレは…
「ナオトはやっぱり現実的だな。先のことをよく考えている。あいつならプロジェクトも安泰だと思ったが…。まさかお前に引き継ぎたいというとはな。マコト、お前良い同期を持ったな。」
ナオトが現実的?課長はいろいろ言ったが、オレは話が入ってこなかった。出来ることを突き詰める。オレが現実逃避をしていて、夢を語るマコトが現実的なのか?どうなってるんだ。
納得いかない話だが、今更プロジェクトリーダーを断るのは現実的ではない。ナオトと引き継ぎをする。ナオトは理想論を語るタイプだと思ったが、引継ぎをしてみると、メンバーの得意、不得意を良くとらえていて、行き詰ったときにどうすればいいかという事も細かく教えてくれた。ナオトは安堵したように笑って言う。
「マコト、お前がチャレンジしないのはただのめんどくさがりだと思っていたが、やっぱりそうだったな。飲み込みが良いし、理由をちゃんと分析できる。安心したぜ。」
「ナオト、お前こそ良く観察しているな。ロマンチストだと思っていたが、大したもんだ」
ナオトは驚いたように答える。
「ロマンチスト?冗談言うなよ。世の中理不尽なのが当たり前なんだから。それをどうにかしないと現実生きていけないだろ。オレは弱っちいリアリストだよ。」
なるほどな。リアルとはオレが思っていたよりもずっとめんどくせえヤツだってことか。出ないものを出す。ナオトに言わせればそうやって現実は出来ているらしい。
※ もう少し長編を考えていた話ですが、展開に行き詰って話を簡単にしてしまいました。現実とは常に理不尽で、それをどう受け入れ、どう感情を飼いならしていくか…がテーマだったんですが、思ったよりマコト君がうまく動いてくれない(笑)。原題は「夢見るリアリスト…」だったんですが、短編どころか超ショートショートに。