世の中にはいろんな人がいるもんで、自信過剰な人、実力はあるのに自信のない人、自信も不安もあって落ち着かない人、何にもない人とかね。
 芸能人で言うと、ファンが多くても不安がもっと多い人ってのもいますよね。特に自信がある人には良くありがちでね。文春砲とか、フライデーとか。自信があるばっかりにやられちゃう。自信が無い人はやられないんですよ。お金も無いからね。ちょっと調子に乗ると自信と一緒に実力以上にファンが付いたりして、浮かれて写真撮られちゃう。このご時世、いつだれがカメラ構えてるかわかりませんからね。すぐスマホで、すぐ写真。すぐ送れちゃう。で、すぐ載っちゃう。調子に乗ると文春にも載っちゃう。
 防犯カメラもそこかしこにある。アレも不思議なもんで、やましい人は気になるんですよね。やましいことがなければ、カメラがあることで逆に安心できるんですけどね。人間一つや二つ、隠し事ってのはあるもんですが、防犯カメラがあることで安心できる人生を送りたいもんで。

 でね、最近は、カメラの前でなんかやることでお金稼ぐ商売が、今まで以上に増えてきましたね。これは自信があるなしにかかわらず、面白いかそうでないかですべてが決まる実力の世界。YouTuberとかまさにそうですね。ただ、面白いものでも知名度が無いとみてもらえない。知名度があっても合う人に見てもらえないと面白いと思ってもらえない。合う合わないは大事ですよ。人に合う、時代に合う。これが合わないと、やってもやっても「ひどい目に合う」ってなわけで。

「どうしたんだい、しけた顔して。」
「ああ、兄貴。へえ、わかりますか。」
「わかるよそりゃ。しけた顔ってのは湿気た顔のこというんだ。
 おまえ、顔洗って拭いてないような顔してる。」
「なんですかそれは。いや、登録者数が増えねえんですよ。」
「なんだ、YouTubeかなんかかい?」
「そう、YouTube。一向に増えていかない。」
「そりゃしけた顔してりゃ増えていかないよ。
 しけた顔ってのは湿気た顔のこというんだ。
 湿気た場所で増えていくのはコケぐらいのもんだ。」
「人をコケにしないでください!」
「ばかいっちゃいけないよ。ええ?
 人をコケにするっていうのは人を馬鹿にしたときに言うもんだ。
 馬鹿にはしてねえよ。
 だいたいお前は湿気た顔でも登録者数が増えていかないんだから、
 一緒にしたらコケに失礼だろうよ。」
「いやいや、コケ以下だったらばかにしてるじゃないですか?」
「コケ以下とは言ってねえよ。コケも結構。コケコッコー。」
「何かと思えば、ニワトリの真似はほかでやってください!」
「いやいや、なんだそのYouTubeとやら、みせてもらおうかい?」
「ああ、ついでにチャンネル登録してください。」
「お前が頼むなら仕方ねえな。チャンネル登録ぐらいお安いもんだ。
 どれどれ。
 おお?
 なんだ?
 ははっ、こいつは意外とおもしれえな。大したもんじゃねえか。」
「へえ、ありがとうございます。
 兄貴に面白いと言ってもらえるとは思わなかった!」
「うん。面白いけどな、増えていかない理由はなんとなくわかるな。」
「えっ、兄貴、YouTubeやってましたっけ。」
「まあな、ほら、見てみろよ。」
「なになに、『スカッと兄貴の世直しちゃんねる?』
 うん、あれ、万引き犯を…捕まえた?
 えっ、これで終わり?」
「そうそう。最後まで見て見な。」
「えっ、この映像はフィクションです?」
「万引き犯役は、隣町のトラってやつにやってもらったんだ。
 どうだ、たいしたもんだろ。」
「いやいや、フィクションって、嘘ばっかりじゃないですか?」
「馬鹿言うな。フィクションって書いてあって本当だったら
 そっちが嘘じゃねえか。
 それにな、この万引きした商品もうまそうに撮ってあるだろ。
 こいつの味の感想を次の動画で載せてある。
 この店とも提携してるってわけだ。うまい!って言えばいい。」
「いやいや、…えっ、これで110万再生?まさに百獣の王!」
「まあ、こんなもんだ。お前の動画は思ったより面白いが、
 音も無ければサムネイルも地味、そのうえ内容も毒にも薬にもならない。」
「いや、面白ければ少しづつバズるんじゃないですかね?」
「バズらせるためにはまず検索に引っかかる内容をタイトルにして、
 その上で嘘でもいいから、毒でも薬でもいいから、ちゃんと利かせる。
   あとは出来るだけ短い動画にするとか、クセになる音を出すとか、
 次の動画につなげるとか、いろいろあるけどな。」
「へえー。そんなもんですか…
 じゃあ、まずそのトラさんに電話して…」
「トラだけマネてもしょうがねえだろ。それじゃマネーのトラだ。
 ノーマネーでフィニッシュになっちまう。
 まあ、毒でもいいが、長くは続かないから、
 やっぱり人の役に立つ内容がいいな。」
「トラさんが嘘言ってんじゃ説得力無いな。男はつらいよじゃないんだから。
 だいたい嘘をついてはいけないでしょ?」
「トラさん違いだが、人情に訴えるってのは一緒なんだよ。わかるか?
 この万引き映像はまず手口を紹介して、
 どうやって捕まえるかを撮ってある。
 これをリアルに再現しお店の協力で撮影してるんだ。
 これをすることで、まずお店の人間が見る。
 さらに万引き犯が見る。そして万引きGメンと業界人が見る、
 それでなんとなく見た人もスカッとする。」
「芋づる式に逮捕してるわけか!」
「逮捕って人聞き悪いな。人はいろんな考え方があるが、
 最終的には人情に訴えかけるのが一番効果的なんだよ。」
「なるほど、兄貴はこれでヒトハナ咲かせたわけだ。それに比べて俺は…」
「やっぱり花を咲かせるってのは、人に綺麗と思ってもらわねえとな。
 別にキレイごとでも構わねえんで、まずは人様の役に立つ。
 感謝してもらってこそ、やっていけるってもんじゃねえかな。
 ヒトハナ咲かせ、人は情け、同じ字だろう?」
「いや、兄貴。オレが浅はかだったよ。
 オレは花を咲かせることばかり考えて、
 見てもらうことを忘れていた。枯れちまったようなもんだな。」
「お前の年で枯れやしねえよ。
 若いうちんだから加齢はしねえってな。だからまあ、カレーライスが…」
「こんな下らねえことを言う兄貴がバズるなんて…」
「バカにしてるのはどうもお前のほうだな。
 俺たちの人生は最初はうまくいかねえかも知れねえが、根っこが腐らなきゃ
 やっていけるってもんだ。
 お前ガーベラって花は知ってるか?」
「バーバラですか?」
「バの字は入ってねえだろうよ。ガーベラって花は多年草だ。
 多年草ってのは冬の間も枯れない花だ。
 その間種も出来るからどんどん増えていく。」
「いやいや、そのガッパーナ?も、腐っちまったらだめでしょう。」
「ガッパーナって、ドールチェ アーンドじゃねえか。
 それが多年草ってのは根っこが腐らなきゃ次の年も生えてくるんだ。」
「へえ、すごいですね、そのバーバパパ。」
「もう原型ねえじゃねえか。花を増やすには、根っこが腐らず頑張ることだ。
 冬も根っこ枯れなければ、花が咲いて種が出来てどんどん増えていく。
 YouTubeも一緒だ。種を蒔いたら、腐らず頑張ることだ。
 根っこが腐らなければ、花が咲いた時に種が出来てどんどん増えていく。
 一度、ヒトハナ咲かせることだ。」
「はあ、すごいなあ、ユッキーナ。そんなにうまくいきますかね?」
「ユッキーナはむしろ炎上商法側だろ。事務所総出でやられるよ。
 言ったろうよ、ヒトハナ咲かせるには、人は情けだ。
 まず人様のためにまずは人の役に立つことだな。」
「人の役にねえ。えすでぃーじーじの役員とかですかね?」
「何と間違えてるんだかよくわからねえが、SDGsでもいいかもしれねえな。」
「やっぱり海老タンスが必要ですかね?」
「人様の役に立つかわからんし、エビデンスは要らねえんじゃねえかな。」
「そうかあ。ガンダーラは難しいが、そこに行けばどんな夢も叶うかもなあ。
 うーんやっぱり自信がねえな。オレに人様の役に立てるかなあ。」
「もうなんかカタカナ言いたいだけだろお前。
 自信もってやらなきゃ人様の役には立てねえだろうよ。
 いいか、信用というのは人の言ったことを用いると書くんだ。
 自信という字は自ら人に言うと書く。まず自信もたねえと、信用されねえんだよ。」
「なるほどなー。兄貴はうまいこというな。
 自信がないとバズらない。バズるという字はバズ…バズーカ…」
「お前のチャンネルが面白かったかどうか、オレも自信がなくなってきたよ…。」
「いやいや、憂鬱してたらYouTubeできねえ。
 ヒトハナ咲かせるために頑張ろう。
 咲かなきゃ魚じゃねえがヒトアワ吹くことになる。」
「たまにうまいことをいうな、お前は。」
「よおし、自信もってやらなきゃなんねえな。
 そうだ、兄貴。オレも仮に咲いたとして、褒めてみてくれねえかい?」
「まずは人様の役に立ちな。
 仮に咲いたら、カリフラワーってんだよ。」


※ 別に落研出身ではないですが、
新作落語を書いてみるテスト。
生まれて初めて落語を書くわけですが、
やっぱりやったことが無いのは難しいもんで…。